行住坐臥法
行住坐臥法とは
日常の身のこなしを大きく2つに分けて解説します。
・歩く・立つ・坐る・寝る(自分のからだを扱う)・・・行住坐臥法
・物を扱う・・・自然操法
『行』 ・・・自在に歩く
歩くことは、ここから向こうへ移動するという、生物にとって最も原初的な行為です。一方、大地を踏みしめ、風を感じながら、過ぎ行く風景をながめ、世界と溶け合うといった至福の喜びをもたらすものでもあります。ですから歩行は、単純な身体の動作でありながら、生きる力そのものとなり、人生や自然宇宙へと開かれていくのです。
文明の発達で、自然な歩きが阻害され、歩行そのものが、つまらないものとなってきているようです。本来の自然で自在な動きを蘇らせ、歩くことの意味を取り戻すために、気功ウォーク:自然歩法をする必要があるのです。
◎重心の虚実歩行
片脚で体全体を支え(実)、片脚を緩めて送り出す(虚)という重心の移動を意識しながらゆっくりと歩きます。
◎スワイジャオ(甩脚・足振り子)
虚実歩行を行う前の補助功として、片脚で体をしっかりと支えた状態で、もう片脚を振り子のように振ります。
◎丹田歩行・命門歩行
下腹部の『下丹田』を意識し、ゴムボールのように張りを持たせ、ゆっくりと粘り強く歩きます。また、後ろ向きに、腰の『命門』を意識してゆっくりと歩きます。
丹田歩行の練習風景 | 芯転の練習風景 |
◎小股ですべるように歩く
重心を沈め、小股ですべるように歩く、お能のような歩きが合理的で、転倒や接触を防止できます。向きを変えるときは、体軸を中心に小刻みに両足を動かして回る(芯転)ことがポイントです。
◎順歩・半身交差歩
右手右足をそろえて踏み出す歩き(順歩)は『ナンバ歩き』として注目されていますが、物を取るとき、狭い空間を抜けるときなど自然にやっている歩法です。半身になり、両足を交差して斜めに差し出す歩き方(半身交差歩)もあります。
◎遠視八方観
遠くの一点を見据えながら、視野を開いて歩くと、物や人にぶつかったり、転倒したりしなくなります。
『住』 ・・・すっと立つ
立つということは、水中生物だった人類の祖先が、進化し、陸上へ上がり、四足を経てたどりついいた進化の最終段階だといわれています。重力に抗して立ち上がり、二本足で釣り合いをとりながらすっと立つことはかなり高度な技でしょう。日本の伝統的なすぐれた能や舞いなどでは立ち姿が重視されています。すぐれた達人はただ立っているだけで、迫力と存在感があります。立ち姿それ自体が、美しく気を発しているのです。この高度に機械化された時代においても、立つことは、まだ生活の中でかなりの時間を占めています。無駄な力を抜き、楽に長く安定して立てることは、現代人の課題でもあります。
◎屈まず、反らさず、ぶれない姿勢
日本の作法や舞踊、古武術、中国の太極拳などは、様々な動作を自然体のままに行うことが基本となっています。自然体で活動するのが最も省エネで、バランスもいいのです。
◎背骨をねじらない
背骨は、構造的に前後に波打つようにできており、左右の回転、捻りはわずかしかできません。背骨を深くねじる運動は、背骨の構造を無視した無理なやり方です。
◎つま先の向きが重要
バランスするためには、からだの重心が動く方向と腰、膝、つま先の向きがそろっていることがポイントです。
◎陰、陽、中の自然姿勢
人の自然な立ち姿には、陰勢、陽勢、中勢の三種類があります。どれがよいというものではなく、背筋が自然に伸び、体軸が中心に通った中勢(すだち、凪の姿勢)を基本として、やや反り身の陽の姿勢、少し前屈みの陰の姿勢、それぞれが状況に応じて変化できることが自然な姿勢といえるのです。
陰勢 | 陽勢 | 中勢 |
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『坐』『臥』 ・・・楽に坐り、ごろっと寝る
坐るという行為はなんでもないようですが、足腰に故障があるときは決して楽ではありません。立った状態から腰を屈め、膝を折り、床に坐るのは、けっこう難しい行為なのです。さらに床から立ち上がるのは、もっと大変な動作です。意識的に坐り、立つということを見直し、日常で訓練することで、足腰も強化され、腰痛膝痛の予防にもなります。
睡眠は、一日の疲れを取り去り、翌朝立ち上がり行動する気力を培ってくれます。しかし心身の緊張や歪みが取れないまま横になると、なかなか寝つけない、目覚めた後も調子が悪いということにもなりかねません。体のこりや歪みを取り去り、心のストレスを解消し、自然に深い眠りに入っていく『自然寝法』が有効です。
◎足ほぐし 足腰の筋肉群をほぐし、股関節や膝の左右の歪みを調整します
1.足先の開閉ゆすり
2.膝の上下打ち
3.かかとの交互ずらし
◎回坐(すわりまわし)・坐臥まわし(ごろ寝起き)
寝る前に、座った姿勢から足腰を伸ばしゆるめ、疲れをほぐします
足ほぐし、回坐、坐臥まわし |
◎放心大地
全身の緊張が解けたところで、心しずかに自分の内側をながめます。
◎大地に緩める姿勢
寝る姿勢には、仰向け、側臥、うつ伏せの3種があります。腰痛や内蔵の病気のときには側臥が楽な姿勢で、自然治癒力を高めます。不安なときは、しばらくうつ伏せで寝ていると、安心してきます。
◎寝返り
全身を縄のようにして、水が流れるように変化させると、寝返りを打つだけで全身がほぐされ、楽になってきます。
◎三点一線
つま先、へそ、鼻先の三点が一直線になるようにして、全身をいったん緊張させてから緩めます。
◎横波ほぐし
腰と背骨をわずかに左右にずらすようにして、全身を縄のように波打たせます。
◎寝て腰、背、首をほぐす
1.両膝そろえ倒し
2.両膝・開き倒し
3.片膝・内合わせ倒し