日常動作が健康を創る…身のこなしのメソッド・自然身法

からだの省エネ―スポーツから日常動作へ

からだの省エネ―スポーツから日常動作へ

 私たちは、ラジオ体操や柔軟運動、マラソンなどのスポーツが古来からあって、日本人に不可欠なもののように思っていますが、これら西洋式の運動が日本に根付くようになったのは明治維新以降であり、その歴史はたったの100年ほどのことなのです。それまでは、舞踊、武術や健康術はありましたが、スポーツというものはなく、それなりに健康に暮らしていたのです。
 古来の日本では作法やしぐさが重視され、日常の起居動作を意識的に丁寧に行うことを小さいころからしつけられたようです。歩く・立つ・物を扱う・坐る・寝るという日常の姿勢やしぐさを自然に無理なく行うことで、怪我や病気を予防し、元気になる方法をとっていたのでしょう。現代のように乗り物や体の代わりをする機械が発達していませんので、生活するためには、自身の体を十分に使いこなさなくてはなりませんでした。そこで歩く・立つ・物を扱う・坐る・寝るといったからだの動きを大切にしていたのだと思います。いったん足腰に故障を起こせば、車もない世界において移動は不可能になってしまいますから、なるべく腰痛や膝痛にならないような姿勢・しぐさを工夫していたはずです。建物や道路といった人工環境も発達していませんので、自然の中で自然の変化に適応できるからだと動きを身につけることが、生きるために最も重要なことだったのです。
 24時間、休む間も続く日常の動作に大切なのは、自然に逆らわず、いかに無駄な力を入れずに、楽に過ごせるかです。安定した姿勢、楽でバランスの良い歩き方、荷物を持つ時もなるべく全身で抱え、特定の部位がすぐに疲労しないような省エネの姿勢やしぐさをするということです。スポーツだけが運動ではなく、歩く・立つ・物を扱う・坐る・寝るといった日常動作も運動ですし、唄を歌ったり、絵を描いたり、文字を書いたりも運動ですし、料理も食事も心身を統一し、全身を総合した立派な運動といえるのです。
 スポーツに意味がないと言っているわけではありません。スポーツと日常動作は目的が違うのですから、分けて考えるべきなのです。健康のためにスポーツに時間を割くのであれば、一生続く日常動作の訓練にも時間を注いだ方がよいだろうというのが、この本の主旨であり、勧めたいことなのです。
 本来、日常動作といえども小さい時から寝返りやはいはい歩き、立ち坐りなどは無意識のうちに訓練して身についてきたものなのです。物を運んだり、道具の扱いなどは、労働の中で練習し会得していったものでしょう。
 しかし、あらゆるものが人工的に楽にサポートされ、本来の自然性が失われてきている今、日常動作をあらためて見直し、再びより自然で無理のないものにするために訓練することには深い意味があるのです。

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